「おもしろオカシク楽しく」が創作の原動力。 カミジョウミカが描く、摩訶不思議な宇宙の世界へ! 【ギャラリートークレポート】

日常の断片から、摩訶不思議な空想の世界へ。カミジョウミカの個展「眼に眼にマカフシギな宇宙」が、東京・銀座にある「HERALBONY LABORATORY GINZA Gallery」で、2026年10月3日(土)から11月16日(月)まで開催中です。

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カミジョウミカは、HERALBONY Art Prize 2024でJINS賞を受賞した後、さらにHERALBONY Art Prize 2026では審査員特別賞(黒澤浩美賞)を受賞。ますます注目が高まる中、今回、待望の個展を初開催するに至りました。

この記事では、カミジョウさんご本人を囲んで、会期初日に開催されたギャラリートークの様子をたっぷりとレポートします。聞き手は、作家の魅力を伝える「異彩通信」やメールマガジンなども担当している、ヘラルボニースタッフのMarieです。

イベント当日は、普段、長野県安曇野市にお住まいのカミジョウさんにぜひお会いしたい、直接お話しを聞きたい、と、30名を超えるお客様がギャラリーに足を運んでくださいました。ポップでカラフルな中にポジティブさと毒っ気が共存する、パワフルでユニークな作品を次々と発表する彼女の創作の裏側とは。熱気と笑顔にあふれたイベントの様子をご紹介しましょう。

「描くことは生きること」
表現活動のはじまりは、入院しながら描いた似顔絵

細胞、微生物、臓器。不気味で摩訶不思議な夢。妖怪や宇宙人から土偶まで。カミジョウさんが描く作品世界は、私たち人間の身体の内側から、地球の外の遥か彼方、さらには時空も超えて、縦横無尽に広がっています。

その表現に用いた素材をよく観察してみると、実は絵具などの画材だけではなく、私たちの日常生活にあふれる身近なもの、思いがけない品々によって、作品が構成されていることに気づきます。
例えば、カミジョウさん自身が毎日服用している薬のパッケージ、スキンケアに使う化粧用コットンに、使い古した布やカレンダー、アルミホイル、さらに飲み終わったペットボトルのラベルや、使い切った絵具のパッケージまで。

「こんなところに身近なものが!」と、鑑賞者が驚き、思わず笑顔になってしまう作品を発表し続けているカミジョウさん。そもそもなぜ、絵を描こうと思ったのか、きっかけを伺いました。

カミジョウさん
「19歳の秋、世界でわずか5名の症例の難病を患いました。症状の悪化とともに寝たきりになって、入院を余儀なくされたのです。入院生活の間は大好きなマンガ『ちびまる子ちゃん』を読んでいましたが、まるちゃんのお友達である永沢くんが主人公の作品を読み、『なんだか自分と似ているなぁ』と思ったのです。以降、彼をモチーフにした絵を描き始めました。」
「そのうち、日々お世話になっている医師や看護師さんたちの似顔絵を描くようになりました。人見知りで話すのが苦手だったので、きっかけが欲しくて、笑ってもらえるようかなりデフォルメして描いていましたが、喜んでくれたのが嬉しかったです。

ナースステーションでは、二科展ならぬ『ミカ展』まで開いてくれて、他の患者さんにも喜んでもらえました。こうやって喜んでもらえるならもっと描こうと思い、その気持ちが今も作品を描く原動力です。」

長い入院生活を経て、20歳になる頃に退院したカミジョウさん。寝たきりの状態がしばらく続いたものの、その後出会ったリハビリの先生との取り組みにより、現在のように車椅子に座った状態で生活できるところまで回復していきました。


Marie
「リハビリだけではなく、創作活動もずっと続けていらしたんですよね。ユニークな似顔絵を描いていた頃を経て、現在のような作品を制作する経緯やきっかけのようなものは、何かありましたか」

カミジョウさん
「そうですね、今から25年以上前、だいたい2000年くらいの頃の話なのですが、これからどんな絵を描いていこうかな、と考えたとき、幼い頃から眠ってるときに見る夢のことが頭に浮かびました。
摩訶不思議なキャラクターとか、説明できないようなものが出てくる夢で、それをモチーフにできないかな、と。
また、水彩絵具やポスターカラーといった画材のバリエーションも増えましたし、当時パソコン教室で教えてもらっていたデジタルアートも描いてみていましたね。」

微生物、菌、体内から宇宙まで。
描くテーマやモチーフ、素材も、あらゆるものから着想

自身の夢をテーマに「試しに描いてみたら、結構面白くなっていった」というカミジョウさんが、今回、会場に展示されている作品は、2020年以降に制作したものを中心に、2026年になってからの新しい作品など全部で20点以上。
ここからは、カミジョウさんの作品の魅力の一つともいえる作品タイトルとともに、テーマやモチーフ、使用している素材などについて、いくつかの作品をご紹介していきます。

《キラキラしてる胃だよーん》(2018)
画面一面が、立体的でカラフルな素材でおおわれている本作。ギャラリーを入ってすぐ左手の壁面に飾られており、ギャラリーの前を歩く人たちも思わず眺めるほどの存在感を放っています。

カミジョウさん
「表面のキラキラしているものは、スパンコールや目玉のシール、そして子どもの頃から服用している薬のパッケージ。キャンバス一面に貼っています。薬は、特に胃薬を服用し続けてきましたが…もし胃の壁がキラキラしていたら面白いかな、って思って貼ってみました。」

《太陽コロナがダラダラ》(2026)

カミジョウさん
「この作品は、2026年の6月に完成した新作です。大きな黒い丸の部分が太陽コロナで、その周囲には太陽がまるで爆発しているみたいに、外側へと飛び出てくる溶岩とか、さまざまなものを表現しています。」

カミジョウさん
「使った素材のところに『古紙』とありますが、数年前に使っていた日めくりカレンダーや、茶色くなってしまった画用紙をキャンバスにたくさん貼り重ねています。その上から、絵具の水を吹き付けました。最初に赤、次にオレンジ、そしてレモンイエローを塗り重ねて、まだらな感じに表現しています。」

Marie
「絵具の水は、カミジョウさんがご自身で考案したんですよね」

カミジョウさん
「はい。実は徐々に腕に力を入れづらくなってきてしまっていて、この先、大きな作品を描き続けられるようにするにはどうしたらいいかな、と考えて生み出しました。画面に吹き付けて彩色できるよう、スプレーボトルに絵具を混ぜた水を作っています。」

《がっつり光り出したアニマル》(2020)※売約済
小ぶりなシルバーの木製パネルの表面には、内側からなにかが生まれてきそうなポコポコとした隆起が。これ、実は紙粘土で作られているそう。有機的なかたちと、描かれているカラフルな菌や細胞のような存在の色づかい、ネコの顔や瞳のように見えるモチーフも、全てがどこか可愛らしく、お部屋に飾るととても目をひきそうです。
《病みってヤム回虫》(2021)
キャンバス全体にボーダーのように貼られたガムテープの上から、絵具でタッピングして色を重ね、その上にアクリルガッシュで細かな回虫がぎっしりと描かれています。思わずじっくりと細部まで眺めてしまう、不思議な魅力があります。よく見ると「ヤムヤム……」と描かれている文字も。
《ビセイブツさんがただよう》(2021)

カミジョウさん
「これを描いた2021年ってコロナ禍の最中だったので、やっぱりウイルスや微生物に興味を持ってモチーフに選びました。画面が凸凹しているのは、キャンバスに木工ボンドでペレットをたくさん貼って作っています。その上から、黄色と紫色のアクリルスプレーを吹き付けて、さらに上から透明のアクリル絵具で微生物を描いているので、ツヤツヤしていますね。」

《月夜にきいろ飴が降る》(2024)
キャンバスの表面の不思議な質感は、スキンケアなどに使う化粧用コットンを一面に貼って演出。パキッと鮮やかな青にレモンイエロー、白と黒の線や模様が印象的で、「雨」ではなく「飴」というタイトルもユニークです。

《ニヤニヤ細かい四匹ネコ》(2025)
キャンバスの上に画用紙やノートのページをちぎった紙などが層になって貼られ、黄色と黒のコントラストや線画のニュアンスと、何とも味のある表情のネコたちが憎めない作品です。

カミジョウさん
「コットンを貼ったり、画用紙やノート、昔読んでいた雑誌のページをちぎって貼ったり、いろんなメディウムの表現を試してみました。」
《頭から土偶が出演》(2025)※売約済
キャンバス一面がアルミホイルで覆われ、キラキラとシルバーに輝く画面には、黒と白のクールなモノトーン配色で、ゆるキャラのようにチャーミングな土偶や不思議な姿かたちをした存在が、油性ペンやアクリル絵具で細やかに描きこまれています。

「おもしろオカシク楽しく」というマインドを大切に

30年近くにわたり、唯一無二の作品を描き続けているカミジョウさん。
なぜこれほど豊かでユニークなテーマやモチーフで、創作を続けてこられたのでしょうか。

カミジョウさん
「幼児期からひとり遊びが大好きでした。もちろんお友達もいましたが、自転車に乗れない、とか、一人で外出するのが難しい、とか、制約も少なくなかった。脳内でひとり遊びしているうち、病院のお医者さんや、宇宙人、妖怪、魔法使いになった自分を妄想して遊ぶことが日常になっていました。
その当時の思考を、いま作品にしている感覚だし、今もやっぱり“目に見えない存在”みたいなものが好きですね。」

Marie
「わたしも同じように、幼い頃はひとり遊びをしていました。自分でいろんな設定を考えて、人形と遊んだりもしていたので、理解できます。
また作品にはいつも、多種多様な品々が画材として使われていますね。こういった身近なものを作品に取り入れるようになったきっかけを教えてください。」

カミジョウさん

「普段、外出すること自体が簡単ではないので、例えばスケッチするために出かける、ということもありません。それでもある時、何かできないかな、使えるものがないかな、と、家の中で探してみたのです。
例えば、キッチンにあったクッキングペーパーやキッチンペーパー、保存用のラップ、部屋に置きっぱなしになっていた古い雑誌とか。それ以来、先ほどの絵具のチューブや薬のパッケージといったものまで、何か使えそうかな、と思うと集めて保管していますね。」

Marie

「日常のなかに溢れている何気ないものも、少し見方を変えるだけで素敵な素材になり得るんですね。カミジョウさんの作品を見ていると、何気ない日常が愛おしく感じられてきます。」
Marie
「さて皆さま、このギャラリーに入ったときに、前方から視線を感じたかもしれませんね。まるで右目と左目のように、天井から吊るして展示していますが、《左目にはパラダイス》《右目にはアルマジロ》という二つの作品です。

本作の素材は粘土やフェルトなのですよね。あと、どこかで見たことのあるようなビジュアルのものがびっしりと付いていますが…、これがカミジョウさんが『絵具の殻』と呼んでいたものでしょうか」

カミジョウさん
「そうです。実は使い終わった絵具のチューブを洗って綺麗にして、ハサミで切って配置しました。大量に自宅にあったので、何かに使えないかな、と考えていて、ふと、貼り付けたら面白いかなぁって。
あと、瞳のようなデザインの中心には粘土を、うろこのような部分はフェルトです。さらにその周囲にあるブルーのつぶつぶした部分はペレットを使っています。」

Marie
「とっても面白いですね!これは余談ですが、ヘラルボニーには聞こえないメンバーや見えないメンバーなど、さまざまなスタッフが勤務していますが、この作品を見えないメンバーに説明するとき、アジの開きならぬ、『絵具の開き』という表現が出てきたのが面白かったです。」

カミジョウさんの型にとらわれないユニークな姿勢と思考は、本展のタイトル「眼に眼にマカフシギな宇宙」や、各作品名にも滲み出ていました。タイトルや作品名の由来をお聞きすると、「実は『眼に』は、『many(たくさんの)』とのダブルミーニングです」と一言。

カミジョウさん
「個展のタイトルには、この世界にはまだまだたくさんの不思議が存在していることや、わたしの作品を通して少しでも宇宙的な世界をイメージしてもらえたら嬉しいな、という気持ちを込めてつけました。

作品名も楽しんでもらえて、とても嬉しいです。これらの名前、実は思いつきだけではなくて、姓名判断のサイトに入れて、縁起のいい画数にしているんですよ。」

姓名判断の軸で作品名を決めている、という思いがけない話題は、弊社のメンバーも初耳。イベントを見守ってきた多くのお客様も非常に驚いていました。
カミジョウさんご本人もよく口にされている、「おもしろオカシク楽しく」という言葉。改めてそのマインドはどこからきているのか、聞いてみると。

カミジョウさん
「私は射手座生まれなのですが、射手座の人間って、AIの分析によれば、好奇心旺盛で楽天家、思いついたら即行動、というタイプみたいで、確かに!と思いました。創作している間は、さまざまなイメージやモチーフ、場所や時空もバラバラな中を、宇宙に飛んでいったり異星人と交流したり、と自由に考えています。

子どもの頃は、外見を理由にいじめられたこともあったし、ついネガティブな気持ちになってしまうこともあったのですが、年を重ねてきた今は、どんどん楽しくなってきている感覚があります。」

そして、「人生は何が起こるかわからないなぁ、と思いました」と語ってくれたのが、HERALBONY Art Prizeでの受賞。

カミジョウさん
「公募展の機会は、自分自身が旅に出られなくても、作品そのものがいろんな場所を旅してくれて、たくさんの人に出会い、作品を観ていただける機会につながります。障害の有無に関係なく、今も多くの公募展に出品していますが、その中でHERALBONY Art Prizeで賞を連続受賞できたことで、これからの作家活動の目指す先、みたいなものが見えてきたかなぁ、と思っています。これからも絵をどんどん描き続けていて良いんだな、って。」
カミジョウさんからの非常に嬉しいコメントに、会場からは大きな拍手がおこり、トークイベントは幕を閉じました。

イベント終了後には、JINSがコラボレーションした際のアイテムを手に、カミジョウさんと記念撮影をするお客様や、ショップに立ち寄ってお買い物を楽しむお客様の姿などが見られ、とても賑やかで笑顔あふれる時間となりました。

ネガティブな気持ちを隠すことなく、明るくあっけらかんと話すカミジョウさんの姿は、作品と同様、鑑賞する私たちに、「おもしろオカシク楽しく」というマインドでいられたらそれだけで最高だよね、というメッセージを残してくれました。

入院生活の中、独学で絵を描き始めて、30年。カミジョウさんにしか描けない、つくれない作品が、これからも次々と発表されていくことでしょう。今後のご活躍がますます楽しみになるとともに、その活動をこれからもサポートしていきます。最後までお読みくださり、ありがとうございました!

※展示作品はこちらからもご覧いただけます

Profile

カミジョウ ミカ
19歳のとき、世界で症例わずか5名の希少難病が判明し入院。寝たきりの状態となるも闘病しながら独学で絵を描き始める。
30年間にわたり描き続けてきた作品のほとんどは、眠る時に見た夢や空想の世界をテーマにしている。そこには、彼女が心惹かれる人体、惑星、虫、菌、動物が登場し、色鮮やかで幻想的な世界が広がる。日々のほとんどを自室という限られた空間で過ごす彼女にとって、真に自由でいられるのは創造的な夢の中の世界であり、制作活動に没頭する瞬間である。「生きることは描くこと、描くことは生きること。」を信念に、世界中の人々に作品を見てもらうことが彼女の夢である。

HERALBONY Art Prize 2024 JINS賞受賞
HERALBONY Art Prize 2026審査員特別賞(黒澤浩美賞)受賞

【取材・執筆】Naomi
【撮影】宇佐美亮

■展示概要
カミジョウミカ個展「眼に眼にマカフシギな宇宙」

会期:2026年10月3日(土)〜11月16日(月)
場所:HERALBONY LABORATORY GINZA Gallery(東京都中央区銀座2丁目5−16 銀冨ビル1F)
営業時間:11:00-19:00
定休日:火曜日(祝日の場合、翌日)※ストアは無休で営業
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■ギャラリー来場特典 【アートブックカバーを先着1000名様へプレゼント】

会期中、HERALBONY CLUBの会員の方限定でアートブックカバーをプレゼントいたします。※1000枚限定、無くなり次第終了
※会期中の新規登録者も対象。HERALBONY CLUBへの登録は無料です。
 アートブックカバー起用作品: カミジョウミカ 《レッドで白い黒の成長》(2025)

【10月24日(土)14:00〜開催】
分身ロボット「OriHime」を通じた作家トークイベント

分身ロボット「OriHime」を通じ、長野のアトリエにいる作家・カミジョウミカとのトークイベントを開催。移動の制約がある作家もトークイベントにお招きできるようにと考案した、新たな試みです。

登壇:カミジョウミカ(分身ロボット「OriHime」にて登壇)
司会:北村茉里映(ヘラルボニースタッフ)
日程:10月24日(土)14:00〜15:00
場所:HERALBONY LABORATORY GINZA Gallery(東京都中央区銀座2丁目5−16 銀冨ビル1F)
参加費:無料・事前申込不要

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分身ロボット「OriHime」とは
オリィ研究所が提供する、遠隔操作でありながら「その場にいる存在感」を共有できる分身ロボット。子育てや介護、身体障害などによる「移動の制約」を克服し、「その場にいる」ようなコミュニケーションを実現します。
2026年2月には、HERALBONY ISAI PARKにて「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」のコラボレーションも実施しました。

※イベントは天候や出演者の体調などにより、急遽中止になる場合があります。