HERALBONY STANCE FILM #スタンスを着る
「おしゃれな人」ってどんな人のことを言うのだろう。
わたしたちは「おしゃれ」の定義を、単に見た目の美しさだけではなく、自分の中に軸となる価値観や精神性があり、それを客観的に見つめ、理解し、自分らしく表現できていることだと考えました。
HERALBONYを選ぶということは、“わたしが大切にしている何か”を語るということ。
これは、HERALBONYが贈る新感覚のスタイリング企画。モデル、スタイリスト、アーティスト――ファッションの最前線を行くあの人が、HERALBONYをまとい「自分のスタンス」を表現します。
第一回は、アーティストとして音楽やアートで表現をおこなう傍ら「FLATLAND」のディレクターを務める森田美勇人さんが、HERALBONY LABORATORY GINZAに登場。作家・山根孝文のオープンカラーシャツとリラックスハーフパンツのセットアップスタイルを、銀座の街並みに合わせてスタイリングします。
総柄にローファー、カジュアル生かしの“銀座スタイル”
ーー本日、へラルボニーのアイテムを着用されてみた率直な感想を聞かせてください。
森田:総柄のアイテムってもともと好きなんです。古着をよく買ったりもしますし、僕自身も絵を描くことがあるので、服にアートを落とし込むとか、デザインすることにも関心があって。そういう意味でも、今回のアイテムはすごく自分にしっくりきました。見た目は派手なんですけど、それも含めて心地よく感じました。
シルエットも工夫されていて、すごく着やすいですよね。春夏向けの軽やかな素材感もあって、着ていてとても気持ちがいいです。
森田:ヘラルボニーのアイテムは、フォーマルにも寄せやすい印象があるんです。スーツに柄物を合わせたり、ネクタイで遊んだり……そういう余白があるのがいいなと。
へラルボニー公式オンラインストアのルックではサンダルを合わせたスタイリングでしたけど、僕は今日あえてローファーでフォーマル寄りに寄せてみました。銀座という場所にも合いそうなテンションで、ちょっとした実験です(笑)。
日本人でも子供っぽくならないパンツシルエット
ーー総柄に対して「着づらい」と感じる方も多いのですが、そのあたりはいかがですか?
森田:確かにハードルが高いと思う人もいるかもしれません。でも、ヘラルボニーのアイテムって、アーティストの色使いがとても魅力的で、ファッションとして成立してるんですよね。「おしゃれだな」と素直に思える配色が多いから、僕はまったく抵抗なく選べます。
それに、今回のパンツのシルエットもすごく良くて。股上が深めで、短パンなのに子どもっぽくならないというか、柄の魅力が引き立つ設計になっている気がします。
日本人って、シンプルな短パンだと着こなしが難しかったりするけど、これはモード寄りのラインで、むしろ日本人にも似合うんじゃないかなと感じました。
まとう服も、自分と違和感のないものを選びたい。
ーーこのインタビューでは、「大切にしていること」や「物事へのスタンス」についてもお聞きしています。森田:僕は、小さい頃から少しだけ芸能活動のようなことをしていたんですけど、人前で何かを演じるとか、過剰に見せることがあまり得意じゃなくて。だから、普段から自然体でいられたらいいなって思っています。
身にまとう服も、自分と違和感のないものを選びたい。無理をせず、自分がしっくりくるかどうかが大事なんです。人に対しても同じで、「肩書き」よりも「その人の空気感」に目が向きます。画家だとか、職業で判断することはあまりしないですね。
森田:障害のある方のアートも、僕にとっては「可能性のある表現のひとつ」という感覚なんです。自分自身がアートをしていく中で出会った表現が純粋に面白かっただけで、特別に意識していたわけではないです。
ーー森田さんのプロジェクト「フラットランド」も、そこにつながっているのでしょうか。森田:そうですね。「フラットに見る」っていう姿勢はすごく意識しています。時代や評価に流されず、自分の感覚でちゃんとものごとを見ていたい。
実は、僕の弟はダウン症なんです。最初は「どう関わっていいか分からない」という不安がありました。でも、彼自身は何も変わっていないし、普通に育って、友達もできて。自分が勝手に「障害」というものに恐れを持っていただけなんだと気づきました。
どんな職場や場面でも、壁を感じることってありますよね。能力不足を理由に厳しくされることも。でも、それはどんな人にも起こりうることで、特別なことではないと思うようになりました。
「強くなくてもいい」──ニュートラルでいるという選択
森田:ヘラルボニー代表の松田兄弟のお二人の考え方も、とても素晴らしいと思っています。でも僕には、ああいう「強さ」はあまりないかもしれない。だからこそ、「ニュートラルでいること」を大切にしているし、それが自分なりの信念です。
ーー「自然体」の大切さを知っていても、どうしても人は自分を大きく見せたくなってしまうもの。そんなとき、どうやってフラットさを保てばいいでしょう?
森田:うーん……。ひとつ挙げるとしたら、「諦めること」かもしれません。理想の自分と今の自分が離れていくと、苦しくなってしまう。だからこそ、「できない自分」も認めてあげることが大切なのかなと。
そうやって肩の力を抜くと、むしろ何かが始まる気がします。「これでいいや」って心から思えると、見える景色が変わってくる。やまなみ工房さんに伺ったとき、山下さんが「健常者に追いつこうとは思っていない」とおっしゃっていて、その言葉がずっと心に残っています。
「今、自分が心からいいと思えることに向き合う」。それだけでも十分だと思います。
うまくいかない時間が続くこともあるし、僕自身もまだ何かを見つけたとは言い切れません。でも、何かに触れてみたり、行動してみたりすると、世界が少しずつ広がっていく。
もし、僕というフィルターを通して何かに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
たとえ全然違う考えにたどり着いたとしても、それはその人らしさになるんだと思います。
だからこそ、「何かに触れてみる」ことが、何かの始まりになるんじゃないでしょうか。
ご紹介アイテム


Profile
森田美勇人(もりた・みゅうと)
アーティスト/ディレクター 1995年10月31日生まれ
アーティストとして音楽やダンスでの表現の傍ら、絵や写真などの表現活動、多数のファッションブランドからのビジュアルモデルとしての起用など、活動の幅は多岐にわたる。
2021年11月に、自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」を設立し、本格的にソロでの活動を始動。近年は「Ground Y」にて自身の撮り下ろし写真を使用したコレクションの発表や、newbalanceの新店舗オープンを記念して描き下ろしたアート作品の製作など、クリエイティブに富んだ活躍をみせている。Instagram / X / YouTube