見たことのないものに出会い、世界をもう一度味わう「été × HERALBONY|Chocolat BOX」

複雑な価値観や無数の「正しさ」があふれる不確かな時代だからこそ、私たちは「確かに感じられるもの」を求めているのかもしれません。今年のバレンタインチョコレートは、そんな想いから生まれた、感性と感性が出会うコラボレーションです。それは、まだ見たことのない美しさに出会うための試みでもありました。
今回ヘラルボニーは、フレンチレストラン「été」とのコラボレーションにより、特別なチョコレートボックスを制作しました。オーナーシェフ・庄司夏子さんが監修した6種のチョコレートを詰め込んだ「été × HERALBONY|Chocolat BOX」。その蓋を開けると、ヘラルボニー契約作家・浅野春香さんの作品《お父さんと星空2》が広がり、はじめて出会う美しい世界が立ち現れます。
庄司夏子さんには、2歳年下の重度知的障害のある妹さんがいます。思春期にはつらさを感じた時期もあったものの、今では感謝の想いがあると語ります。そうした背景のなかでヘラルボニーと出会い、今回のコラボレーションが実現しました。
これまでも数々のトップアーティストと協働してきた「été」のクリエイションは、ヘラルボニーのアートと出会い、どのような世界を描き出すのか。
「été」オーナーシェフ・庄司夏子さんと、ヘラルボニー契約作家・浅野春香さんのお話を通して、その背景と想いに迫ります。

この出会いは「偶然」ではなく「共鳴」

作品名:「ヒョウカ」
作家:浅野春香


 

――まずはお二人の出会いからお聞かせください。お互いの存在を「最初に知ったとき」、どんな印象を持たれましたか?

浅野春香さん(以下、浅野):去年、マネージャーからお仕事の依頼が来て、「庄司夏子さんという方とコラボレーションする話があります」と聞いたのが最初です。マネージャーに送ってもらったメールの文章にも書いてあったんですが、庄司さんのお父様との関係が、私とお父さんの関係に似てるなって思いました。

それと、妹が3人いるんですが、2番目の妹と庄司さんが同じくらいの年齢で、名前も同じなんです。漢字も同じです。

庄司夏子さん(以下、庄司):名前も年齢も? それは運命を感じますね! 私は浅野さんの作品を知って、拝見して、まず圧倒的なエネルギーを感じました。

 「ヒョウカ」という作品名と、その作品に込められた「評価されたい」という気持ち。私にももちろんありますし、誰の中にもある欲だと思うんですが、それが作品としてエネルギーと一緒に表されていて、印象が強烈でした。

不安、よろこび、衝撃。心がうごいたとき表現が生まれる

――浅野さんは、どういうときに「描きたい」という感覚が生まれますか? 感情なのか、出来事なのか、あるいはもっと無意識なものなのか。

浅野:不安なときに、描きたいという気持ちが出てきます。ただ、描いている間はすごく楽しいです。また、嬉しいときも描きたくなります。嬉しいときに描くと、すごく気持ちよくて楽しいです。一昨年、ヘラルボニー・アート・プライズでグランプリの知らせが来たときも、その日に見た雨の絵を書きました。

――庄司さんにとっての作品は料理ですね。今回、そのなかでも“チョコレート”という表現を選ばれたのでしょうか?

庄司:チョコレートって世界的に欠かせないツールの一つだと思っています。私自身が世の中に発信したいことがある中で、ヘラルボニーに触れたときに強烈な衝撃を受けた。その衝撃や想いを、多くの人に知ってもらうチャンスとして、この“チョコレートの季節”はすごく良いと思ったんです。

特に 1月後半から3月半ばまでは、すごく多くの人がチョコレートを買う季節ですよね。自分へのご褒美で買ったり、ギフトとしての需要も大きいですし。自分の作品であると同時にヘラルボニーや浅野さんの作品を知ってもらいたいという意図も大きくあります。

――このチョコレートの素材選びや味の設計で「これは譲れなかった」というポイントはありますか?

庄司:気をつけているのは、あまり尖りすぎた“作品”にしないことです。 より多くの人に召し上がっていただきたいので、「ストライクゾーンが広いフレーバー」というのを意識しました。

浅野:とてもいい香りですね! 美味しそうです。

理屈を超えて惹かれる「美しさ」

――今回のコラボレーションのテーマのひとつが「美しさ」です。お二人にとって、「美しい」と感じる瞬間とは、どんなときですか?

庄司:目に見えるものの中にも美しいものはありますが、私が大事にしているのは、作品である料理を、お客さまが食べ終えた後にふっと出てくる“素直な感情”です。感想だけではなく、お客さま一人ひとりにいろいろなストーリーがある中で立ち上る感情って、何にも代えがたい美しさがあると思っています。

浅野:私はふだん家で制作しているんですが、古い団地で、すごくボロボロで隙間風も吹きます。でも日当たりが良くて、すごく静かで、鳥の鳴き声が聞こえることもあります。畳で制作していて、ふと気づくと、窓から畳に光が降り注いでいて。静かで。それがすごく綺麗だなって思いました。

――説明できないけれど、目が離せなくなる瞬間ってありますよね。「これは理屈じゃなく、惹かれてしまうな」と感じるのは、どんなときですか?

庄司:予測ができずにいきなり降ってくるものですね。たとえば浅野さんの作品もそうですが、緻密さやその目の当たりにした衝動は突然というか、もちろん予想していたものではないですよね。今回もありがたいことに、こういう機会をいただいて知ることができた。計画性を伴っていない衝撃が大きい。

料理も同じです。自分で作っていても、“降ってくる”といいますか、ときに自分の想像を超えるものが突然できたりするんですよね。

浅野:私は可愛いお菓子が大好きで、チョコレートボンボンとか、シュガーボンボンとか、すみれの砂糖漬けとか、メレンゲクッキーとか。そういう可愛いお菓子が綺麗にパッケージされているのを見るのが、すごく好きです。

――庄司さんはこれまで妹さんのことも少しお話しされていますが、“理屈じゃなく惹かれてしまう感覚”や、人を見るまなざしは、妹さんとの関係の中で育った部分もあると感じますか?

庄司:思春期の真っ最中の頃まで、妹と一緒に住んでいました。妹と外を歩いたり、電車に乗ったりすると、周りの人の目線があったり、学校でもひどい言葉が投げられることがありました。今なら「守らなきゃ」と思えるけれど、その頃は正直、疎ましい気持ちもあったんです。

「なんでこんなに冷たくされなきゃいけないんだ」とか、「学校のみんなが妹を普通の人間として見ていない」と感じることもあって。もちろん、家族として一緒に暮らす大変さもあったと思いますし、その頃の記憶はつらい思い出として残っています。

でも大人になって振り返ると、あのときのモヤモヤや目線の経験が、自分の人間性の成長にすごく影響していて。いま自分が生きている上での“パワー”は、そこで培われたものだと感じます。

ずっと、妹への“恩返し”のようなことを、影響力を持ち始めたタイミングでやりたいと思っていました。そこで出会ったのがヘラルボニーだったんです。自分がずっと感じていたことを、こんなに大きくオフィシャルに、影響力を持ってやっている。すごく眩しかったです。

――こうした出会いが今回のコラボレーションのきっかけになっているところもあると思うのですが、ご一緒しようと思った決め手は何でしたか?

庄司:いろんなアーティストはいるけれど、社会の中で“アーティストと見なされにくい立場に置かれている人たち”を、ちゃんと本物のアーティストとして扱っていることですね。

妹がいた施設でも、何かをつくったり表現したりする時間はありました。ただそれが社会の中でどう扱われ、どんな価値を与えられるかという点ではまったく異なります。日本で、こうしたアートにここまで真剣に向き合っている取り組みを知りませんでした。それが決め手でした。

浅野:お父さんとの関係が似ていたこと。仕事への情熱があることです。チョコレートを扱っていることがいいなと思いました。私も仕事に情熱があります。体が許す限り制作しています。それから、庄司さんが妹と同じ名前で、同じくらいの年齢だったことです。

庄司:これは本当にすごい共通点。運命を感じますね(笑)

見たことのない、唯一無二の光を放つ異彩

――今回、浅野さんの《お父さんと星空2》という作品がチョコレートのパッケージになっています。この作品は、どんな気持ちや距離感から生まれたものだったのでしょうか?

浅野:この作品は、お父さんの持っていた不安が、私の不安になったんです。だから不安をぶつけるように描きました。お父さんは病気がきっかけで施設に入り一人でした。「帰りたい」と言っていました。だから、この絵のお父さんは泣いています。苦しんでいるお父さんを助けられなかったけど、苦しんで頑張っていることを私はちゃんと知ってるよ。「お父さんは一人じゃないよ」と伝えたくて描きました。世界にお父さんのことを知ってほしくて描きました。

――庄司さんは今のお話を聞いて、ご自身のお父様との記憶で蘇ることはありますか?

庄司:妹との向き合い方も、父は葛藤していたんじゃないか、と今なら思います。当時は「なんでこんな父なんだろう」と思ったこともありました。父と思いたくない気持ちもあった。でも、乗り越えてきた時間があるからこそ、今こうして、悩みを持つ人にも知ってもらえたらと思う部分があります。

――ヘラルボニーでは「異彩」を、特別な才能というより“その人にしかない自然な違い”として捉えています。お二人はこの言葉を、どう受け取っていますか?

庄司:替えのきかない、唯一無二だと思います。浅野さんもそうですし。浅野さんの努力と言いますか、頑張って生きていないとこういう作品は生まれないと思うので。浅野さんの人柄というか、人生というか。みんながなれるものではないんじゃないかなと思う。

浅野:私は異彩って言われたいです。異彩と言われて、いろんな人に認めてもらいたいです。

――このチョコレートや作品を手に取る人に、もし言葉をひとつ添えるとしたら、どんな言葉を渡したいですか? どんな気持ちになってくれたら嬉しいですか?

庄司:大切な方に、美しいアートピースを贈るという“ピュアなストーリー”を一番大切にしています。見慣れたものだと脳が慣れてしまってハッとしないけれど、今回のパッケージは「見たことのないもの」に出会う体験になると思う。チョコレートはたくさんあるけれど、その中でも特別なものになるはずです。大切な人に、そういう感情になってもらいたいです。

作品名:「お父さんと星空2」
作家:浅野春香


浅野:このチョコレートはすごいチョコレートだよって、みんなに教えたいです。庄司さんのチョコと私の作品がコラボしてできたんだよって。とても綺麗で可愛くて、おしゃれなチョコだよって伝えたいです。

箱をあける瞬間に出会う、これまでに体験したことのない美しさと衝動。
揺らぐ日常の中で、これは本物だと信じられる瞬間を——

今年のバレンタインは特別な瞬間を贈ってみませんか?


浅野 春香

20歳で統合失調症を発症後、入退院を繰り返しながら闘病を続ける。絵を本格的に描き始めたのは29歳のとき。HERALBONYArt Prize2024のグランプリ受賞作品である「ヒョウカ」は「評価されたい」という作家の純粋な感情から制作された。作家は以前までその欲求を「恥ずかしいこと」だと思っていたが、ある人から「それもあなたの素直な気持ちの表れ」と言われたことをきっかけに、ありのままの気持ちを表現して良いのだと気づく。同作は満月の夜の珊瑚の産卵をテーマに、切り広げた米袋に満点の星空や宇宙、満月などのモチーフが緻密に描かれている。母親の胎内にいた頃の情景や、珊瑚の研究者である父親のことなど、作家にとって大切な存在である両親からインスピレーションを受けている。

https://artgallery.heralbony.com/artists/39-/

庄司夏子
株式会社エテ
レストラン「été」オーナーシェフ

1989年、東京生まれ。高校在学中より都内フランス料理店で修業し、卒業後は代官山「ル・ジュー・ド・ラシエット」、南青山「フロリレージュ」に務める。2014年、24歳で独立しパティスリー「フルール・ド・エテ」を、1年後にレストラン「été」もオープン。2020年3月、日本人女性初となる「アジアのベストレストラン ベストパティシエ賞」受賞。

 

été × HERALBONY|Chocolat BOX 5,400円(税込)
étéを代表するボンボンショコラとトリュフのセット。豊かな風味となめらかな口溶けを、静かに楽しめます。作家・浅野春香「お父さんと星空2」のアートをあしらったBOXは、食べ終えたあとも小物入れとして使える仕様。 余韻が、日常に残る一箱です。