岸田奈美さん・良太さんによる「きょうだいと、社会の話。」イベントレポート

こんばんは、HERALBONYスタッフのMarieです。

3月21日は世界ダウン症の日。今年は、ダウン症のある方の日常のお写真を集める企画や、お買い物による作家報酬を3.21倍にする取り組みなどを実施しました。

同日、HERALBONY LABORATORY GINZAでは、作家の岸田奈美さんと弟の岸田良太さんをお招きして、スペシャルトークイベントを開催。会場では、奈美さんと良太さんのテンポ良い掛け合いに、笑い声の絶えないひとときとなりました。

本日は、そんなトークイベントの模様をお届けします。

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良太さんのコミュニケーション力はうなぎのぼり


モデレーターを務める代表・松田とともに、会場入りする良太さん。やわらかな空気と共に会場は拍手に包まれます。

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崇弥:最近の面白いことや思い出になっていることはありますか?

奈美:ちょうど昨日も私がホテルにチェックインしようと思ったら、横からめっちゃ突っ込んできて。「二人です。 僕、弟です」って言ってくれたり、しょうぶ学園っていう鹿児島の施設に見学に行ったときも、私よりも弟の方が質問してて、ここはなんでこんな天井が高いんですか? とか。 ここはいくらもらえますか?とか(笑)。

インタビュー力が結構高くて。すごいですよ。25歳を超えてからコミュニケーション能力がうなぎ上り状態で。目下、成長から目が離せないんです。

崇弥:すごいことですよね。良太さんは、みんなと喋るのがお好きなんですか?

良太:あの、いや、ただのあの、ちょっとあんまりだけど。あのあれことはあの、えっと、あれ。ハリーポッターかな。あれはちょっと怖いから。

奈美:怖いんや。 あの、わからないんですよ。 言ってることが。 それが結構悔しいというか、悲しいんですけど。最近気づいたのは、さっきハリーポッターって言ったじゃないですか。 自分の中でどうしても人に喋りたいことがあって、どんな質問を受けてもそれを言うから。 私も。お互いめっちゃ自分勝手(笑)。

崇弥:でも、いろいろお話してくれてありがたいですね。

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あらゆる「成長を見守る」という距離感


崇弥:奈美さんは、家族の今のこのような関係がずっと続くといいな、という感覚ですか?

奈美:ずっとそうなんです、本当に。物心ついた時から、良太は良太で好きなことやって、私は私で好きなことやって、お互いの行きたいところが一致すると、一緒に行く。

よく、「弟に障害があってどうでしたか?」 みたいに聞かれるんですが、私としては何もなくって。ただうちの母はとても大変だったみたいです。今よりもっとピンポン玉みたいだったんで、もう目が離せないって。急に道路に飛び出して、つかまえるみたいな。覚えてる?

良太:あ~。思い出した。

奈美:(笑)思い出した? その後、特別支援学校を出て、最初の作業所と合わなくて2年くらい引きこもりをしてたんですよね。そこから今のB型作業所に入ってからは、大人になって社会性がめっちゃ上がりました。

立ち見席を含め、当日は満員となった会場。良太さんの話に、思わず笑顔がこぼれます。

崇弥:そうなんですね。確かに、一緒にランチさせてもらったら、フルコースをしっかりとしたテーブルマナーで食事されていましたもんね。

奈美:飛行機も乗れるし、タクシー乗る時も自分で荷物入れて乗れるし。ほんとにすごい。もう大人になると、30歳を超えてから目覚ましく成長することってあんまりないじゃないですか。

崇弥:うちの兄も重度の知的障害伴う自閉症なんですが、15歳くらいまで、朝7時半に起きる、この時間から歯磨きする、この時間からトイレに行く、と母がノートに書いた通りに終わらせるという生活だったんです。その中に夜11時にお風呂から上がるというのがあって、あるとき、お風呂場のタイマーが壊れていたんですよ。そうしたら朝4時までずっとお風呂場にいて。そのくらい時間に対して忠実だったんです。

お手伝いなんかもノートに書いてあることはやる。それが15歳の頃、断ってもいいってことを覚えたんでしょうね。それから何もやらなくなりました(笑)。

奈美:嫌だったんだ。やりたくなかったんや。

崇弥:そう。やりたくなかった。だからあれは成長なんだろうなって今では思っています。

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一番近くにいるからこそ見えないこと


崇弥:家族を見る目に対して、こういうふうにしていくと面白いかもしれないということはありますか?

奈美:30歳を超えても、弟について勘違いしてたことが結構いっぱいあって。 例えば、私が弟の代わりに結構通訳してしまうこと。以前は今よりももっと通訳していたんですよ。ホテルでチェックインするとき、そういう時も絶対喋らせませんでした。やっぱりお互いに傷つくじゃないですか。弟に話しかけても伝わらないっていうのは、かわいそうだから代わりに「あの、うちの弟はダウン症があって」みたいなことを言っていたんです。

でも良太がグループホームで暮らし始めてから、私が通訳できないので、どうしてるのかなって思って心配していたんです。 けど、逆に私がいないことによってめっちゃ喋るようになってたりとか、逆に伝わらなくてめっちゃ悔しい思いして、結構取っ組み合いとかして帰ってくることもあるんです。

崇弥:喧嘩されてるんですね。けっこう激しい。

奈美:私はそれをゲラゲラ笑って「おもろ」って。考えてみれば、そりゃそうやんね。 私たちって言葉でストレスとか辛さをぶちまけたり、人に言葉を吐いたりすることができるけど、そこまでのコミュニケーションが言葉では取れないから、身振り手振りとか意思。 ここから動かないぞっていう座り込みによってそれをやるっていうのは、正しいというか、それでも伝えようとする思いはすごいと思う。こんなに世の中が自分のことをわかってくれなくても、こうやって人を笑かそうとか。 その思いはすごいなって結構圧倒されます。

私は人に拒絶されるのが怖くて、喋るのが苦手なんですよね。文章は書いたら一方的に読みたい人だけ読んでくれるからいいんですが、弟は、果敢に言葉で人とコミュニケーションを取ろうとしていく、自分の心地よい居場所を守ろうとしていくっていう姿はすごいと思う。これがあるべき姿だよなって。

そういうことが、弟が30歳を超えて、やっと分かってくることだから。 家族って一番そばにいるからこそ、やっぱ一番わからないというか、成長の妨げになってることがあるんだなっていうのは最近気が付きましたね。

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老若男女・障害の有無に関わらずさまざまな人が、思い思いのプロダクトをまとい、良太さんが醸し出すやわらかな空気に包まれながら、ゆるやかに混ざり合う。そんな幸せを感じる1日になりました。

これからも私たちは、みなさまと一緒に、そんな空間をさまざまな場所で生み出していきたいと思っています。

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